2015年11月23日月曜日

【意見】ツアー=ハードの考え方はバンド、ファンにとって必ずしも最適解ではないと思う。


先週末、アメリカのハードコアバンドThe Ghost Insideのメンバーを乗せたツアーバスが事故に巻き込まれる、というショッキングなニュースが流れてきました。それに関連して思った事をつらつらと書いたら相当長文になったので、普段とは違うスタイルで記事にしようと思います。

相当波風立ちそうな事を書いているので予め断っておきますが、なにもツアーやツアーを中心に生活しているバンド、そしてオーディエンスをdisるのが目的ではありません。あくまで一人のオーディエンスの井戸端会議レベルの意見です。その点を承知の上で読んで頂けると幸いです。




1.TGIが特別だったわけではない。
この事故ではツアーバスの運転手を含む2人が亡くなり、メンバーも大ケガを負ったようです。ローカルバンドのみをサポートに付けて回るという面白い形式で行なわれていた、USツアーもキャンセル。事故後ネット上では家族を残して亡くなった運転手の葬儀代として、この記事を書いている22日22時現在12万ドルが寄付されています。(リンク

9月には日本でもSecret 7 Lineの機材車が事故を起こし、メンバーが亡くなるなんて出来事もあったし、Facebookとかを見ていると最近ツアーバンドの事故に関するニュースによく接する気がします。ニュースにならない部分ではもっと多くの事故が起こっているのも、想像に堅くないです。



2.想像するだけでもおぞましいツアーの移動環境。
自分もライブ後、まれにメンバーを送り届けに往復3~40キロくらいのドライブをするんだけど、運転中は注意力が少し鈍っていて危ないなあと感じるし、運転後は疲れきってしまい翌日は使い物になりません。先日も土曜日のライブ後メンバーを送り届けて、寝て起きたらサザエさんが始まっていてビックリしたくらいです。これを毎日…と考えるとツアーバンドの移動環境の劣悪さは、想像するだけでもおぞましいです。今回のTGIはバスと運転手を雇っていて、比較的その点は余裕を持っていたのかもしれないけれど、それでも一人で毎日長距離の運転となると相当ハードなはずです。

だからといって、年間100本とかそれに近いペースでライブをするツアーバンドに対して、「もっとゆっくり回んなよ」って言うのは現状酷な話なのでしょう。バンドにとってライブは自分たちを最大限発信できる場所なのに、活動を「危ないから」とわざわざ自粛することにメリットは感じられないだろうし、もっともそのゆとりのための費用や仕事の休みを確保しろなんていうのはほぼ不可能なことです。

でもひょっとすると「できるんならもうちょっと余裕をもって回りたいよ…」って人達が一定数存在しているものの、現実的な面をふまえるとなかなかアクションを起こせていない、というのが実際なのかもしれません。




3.バンドはこれからも現行のリスクを抱えたままツアーするべきなのか?
こうした問題の打開はバンド、リスナーそれぞれの考え方や環境次第でできるようにも見えます。まずはその考え方の1つとして、以前S7Lの事故のときに書かれた、HAPPY and FUNNY LiFEっていうブログの記事が面白いのでシェア。
バンドマンの安全に使われるのであれば、ライブ代やCD代を値上げしてもらって構わない件。 - HAPPY and FUNNY LiFE

レーベルやライブハウスがツアーの安全を保障する。そしてそのためならチケット代、CD代が上がっても構わない。≒ゆったりとしたツアーを組む事のデメリットを軽減する、というこの考えかなり素敵だと思います。記事にも書かれている通り、バンドのパフォーマンスも良くなるだろうし、まさに一石何鳥って感じ。

ただ、この案もバンドの「ツアーの質」を高めることなしには実現不可能です。超ぶっちゃけた話をすると、がらんとしたライブハウスにツアーで回って来て、「○○から来ました!」ってライブをするバンドを目にすると、自分はそうしてまで回るツアーって何か意味があるのかなあと思ってしまうからです。だんだん波風のたつ表現になってきました。




4.ツアーの「質」とオーディエンスの「リアクション」。
何もそのバンドを否定するわけじゃありません。地元でしっかりとキャリアを重ねて、イチかバチかツアーに打って出るバンドの姿勢は本当にカッコいいと思います。ここではそのツアーへの意気込みに対して、自分たちオーディエンスがリアクションの面でドライなことにツッコミを入れます。

以前とある地方のバンドのツアーファイナルを都内へ観に行った際、トリ前までたくさんいたオーディエンスが、トリの彼らになった瞬間ふっといなくなった、と言う場面に出くわしたことがあります。ライブでは出演バンドを最初から最後まで全部かじりついて見る必要がある、というわけではないのはわかっています。でも出演バンドの皆が彼らのことを大切に思っているのがビンビン伝わる、いいイベントだなあと思っていただけに、周囲のお客さんの案外ドライなことにその時は少し悲しくなりました。

あのイベントで彼らが得たものの「質」は、きっとあの日あの場にいた人達が出し得るリアクションに対し、どれくらいのものだったでしょうか。せっかく遠征して来たけど、リアクションが薄いからまた何回も足を運んで力ずくで頑張らなければならない。これでは何も変わりません。




5.リアクションにもいろいろある。
ここまで例としてライブを挙げました。確かにリアクションとして一番良いのは、やはりライブハウスに足を運ぶ、マーチを買うなど直接のサポートで間違いないはず。でもそれだけじゃなくて、「○○よかった!」って周囲に話すなり、SNSでシェアするなりして、他の人を巻き込む事もリアクションとしては同じくらい重要です。巻き込んで広がって行くスピードが速ければ速いほど、一つ一つのツアーの質がより濃い物となるから。

もっとオーディエンスの側が様々な形でツアーバンドにリアクションを届けられたら、これまで数をこなしてファンベースを築いてきた、彼らのあり方は少し変わるような気がします。焦らずとも、一つ一つ今以上に集中すればきちんと結果が出る、という事が理解できれば、数をこなすことの持つ意味も変わるはずなので。




6. シメ。
長々と書いたし、初めのTGIの話題からはかなりそれましたが、結局の所この記事の意図する所は「もっとツアーバンドをしっかりフォローして、ツアーの質が変われば、他もいろいろと変わっていくんじゃん」ってところです。もちろん現役バリバリのツアーバンドの人達からしたら「ツアーしたことないお前に何がわかる、調子乗るな」って話かもしれませんが、初めに書いた通りあくまで一意見ですのであしからず。

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